静岡は遠い。たんこさんは、富山が遠いのよと言う。そのようにも思う。
静岡駅に到着したら、へろへろでホテルのベッドに倒れ込む。このままではせっかくなにか美味しいものでも食べておいでと送り出してくれたたんこさんに何も報告ができないということで、静岡おでんを食べに行く。
私はひとりで飲みに行くのが苦手だ。知らない人と飲むのも苦手。酒は誰と何処で何のために飲むかがとても重要とのシベリアのうわばみアンドレイの言葉をウォッカ道とする寄寓人は、ひとりでは飲みに行かないのだ。
おでん屋がならぶ横町に足を踏み入れても、なんだかこのまま引き返そうかと躊躇する。カウンター越しに呼ばれて、ようやく店に踏み込む。
この横町のおでん屋はみんな小さい。誰彼なしに話が弾むお店のカウンターに座り、地酒「磯自慢」を口に含ませた頃には、みなさん飲みトモダチだ。

静岡おでん。黒いおだしで色濃くなったおでんに鰹節の粉をかけ、青のりをふる。このお店のおだしには砂糖も味醂も使わないそうだ。だからひつこくない。

なかなかうまい。いい気になって、喜久酔をいただく。調子にのってハムカツを注文。厚みのあるハムカツよりは薄いハムカツが好みだけど、いい気分になってたせいか、厚みのあるハムカツもまたよろし。
またまた調子にのって臥龍梅というお酒をいただく。これが一番気に入ったかな。
お客も入れ替わり、鯔背なご老人に会う。ジェームス・ディーンの革ジャンに色鮮やかなパーカーを羽織り、白いシャッポの粋なご老人。背筋がピンとしててね、あんまりにもかっこいいんで写真を一枚いただきました。

「一期一会だね。貴方と話せてうれしかったよ。」
そういわれて、なんだか気恥ずかしくなる。静岡の粋な人のストレートな気持ちを受けて、少し酔ったかなと思った。
[0回]